Freedom(フルコン)チューン

フルコン導入の本当のところ

 「少しでも気持ちよく走れるようしたい」。ロードスターを手に入れて、まず手始めにエアクリーナーやマフラー、エキマニ、点火プラグ、プラグコード、などなど、いろいろなパーツを変えてみる。新しいパーツの効果を想像して取り付けて、走る。とっても楽しい瞬間です。

 チューニングを進めるうち、たどり着くのがECU(Engine Control Unit)チューン。一般の人にはまったくのブラックボックスに近いコンピューターをチューンする。「ノーマルはエンジンやガソリンの品質のばらつきに備えてかなりマージンを持ったセッティングがしてある」。そんなウワサを聞いてしまうと、否が応でもECUチューンへの期待が高まります。

 けれども、ちょっと待ってください。今の仕様のエンジンで調子が悪いところがあるでしょうか? レブリミットまできれいに吹け上がって、アイドリングも調子が良い。それならば、10万円以上をつぎ込んでフルコンを導入する意味はあまりない気がします。実際、間瀬耐久レースで戦うT.O.R.F.ロードスターは、まったくのノーマルエンジンに、ノーマルコンピューター(おまけにノーマルエキマニ)ですが、排気系などの見直しや車体の軽さもあって実に気持ちよく吹け上がります。

 確かにノーマルコンピューターだと回転域によってトルクの谷がある場合があり、燃調と点火時期の調整でエンジンの回り方は変わる可能性はあります。しかし、フルコンの場合、自らパソコンを広げてプログラムできるスキルを身につけないと、調子が悪くなるリスクも背負います。ノーマルコンピューターは気温が低くなろうが標高が高い場所に行こうが調子よく回りますが、フルコンの場合は気温や気圧といった条件が変わった場合、突然調子が悪くなる場合もあります(ショップによるセッティングでは、すべての場合をセットし切れないことが多いためです)。燃調が薄すぎたり、点火時期を進め過ぎたりすれば、最悪、エンジンブローにもつながります(B型エンジンは頑丈ですが)。

 「エアフローセンサーの抵抗を取り払う」と、ネットでは圧力センターで制御するDジェトロ化や、スロットル開度に基づくα-N制御化を勧める記述もよく見受けますがNA6CEのフラップ式エアフロでさえ、問題視するほど抵抗にはなっていないように思えます。NB型のエアフロに至っては、Dジェトロ化したエンジンの吸気管に付いたままセッティングをして、それを外しても燃調が変わらないほどですので、ほとんど抵抗になっていないのでしょう。少なくとも、ノーマルやノーマルに近いエンジンにフルコンを導入しても、数十馬力も向上するような「劇的」な違いはないことは確かです。

 「じゃあ、何のためにフルコンがあるの?」と言えば、それはノーマルシステムでは対応しきれないチューニングエンジンを調子よく回すため、と言えばあながち間違ではないかも知れません。「コンピューターをいじってみたい」とフルコン化自体が目的の方(これはこれで車への理解が進んで楽しい!)でない限り、T.O.Racing Factoryではフルコン化はお勧めしていません。

フルコンを入れた方が良い場合

○カムシャフト交換
 「カムに乗る」という言葉があるようにスポーツカーのエンジンの気持ちよさを引き出すチューニングにカムシャフトの交換があります。ところが、バルブタイミングのオーバーラップ時期の増加によって、アイドリングの調子が悪くなる傾向があります。吸気、排気の弁がいずれも開いているタイミングが長くなるので、排気の吸気側への吹き返しが多くなるためです。

 特に、フラップ式エアフロのNA6CEの場合、オーバーラップを増やしていくと吹き返しなどの影響を強く受け、264度のハイカムを入れると狙いたいバルブタイミングにできない場合もあります。軽量フライホイールを入れていると特にこの傾向が強くなります。

 信号待ちごとにエンストしてしまうような車では街乗りがままならない。仕方がないから、とアイドリングを優先してオーバーラップを減らす方向でバルブタイミングを決めると、何の特徴もなく回るエンジンとなってしまい、せっかく高いコストを払って入れたハイカムの性能が生きないどころか、扱いにくくなっただけ、という結果になります。

 こうした場合、Freedomコンピューターの導入で、アイドリングが調子よくなってバルブタイミングの自由度が広がる場合が多く、さらに回転域ごとの充填効率が変わっているため、ノーマルコンピューターでは空燃比が濃くなりすぎたり、薄くなりすぎたりしている領域を適切に調整することが可能です。

○ハイコンプチューン
 自然吸気エンジンの性能を引き上げるチューニングに圧縮比や排気量アップがあります。シリンダーヘッドの下面を面研する程度であればノーマルコンピューターでも支障はありませんが、排気量アップのために社外ピストンを導入した場合、圧縮比が11前後になる場合が多く、さらに面研も組み合わせた場合、ハイオクガソリンを入れてもノーマルコンピューターではノッキングが出る場合があります。

 さまざまな手を尽くしてもノッキングがなくならない場合、フルコンの出番となります。ただ、NA6CEとNA8Cの場合で、ノッキングを抑える目的であれば、ノーマルコンピューターのプログラムを変えるROMチューンで対応するのが安価で調子も良いエンジンとなり、ベストだと思います。

○4連スロットル
 豪快な吸気音やエンジンルームの存在感。4連スロットル化は性能のアップもさることながら、人とは違う車を手に入れる満足感もあります。272度、288度といったかなり作用角の大きなハイカムも、4連スロットルとともに導入してその性能が生きてきます(ただ、このくらいのカムになってくると、排気ガスのCO,HCの測定値が基準を超えてしまうためまず車検は通らないので、車検時に対策する必要が出てきます)。Freedomコンピューターであれば、4連スロットル化のほか、大きな作用角のハイカムでも、街乗りができるほどのセッティングが可能です。

○過給器取り付け
 ターボやスーパーチャージャーを取り付けた場合、過給圧を上げていくともはや、ノーマルコンピューターでは対応しきれなくなる場合が多くなります。ノーマルコンピューターを前提にしたターボキットの場合、高回転時にはほとんどブーストがかからないとか、燃調のコントロールのためにエアフローセンサーの信号をごまかす装置を入れるとか、どうしても本来の性能を引き出すことはできていません。パワーを上げていく場合、ノーマルのインジェクターでは燃料が足りなくなることが多く、高回転まで回すとエンジンブローの危険も高まります。Freedomコンピューターでは、圧力センサーに基づくDジェトロが基本ですので、ターボやスーパーチャージャーの過給にも問題なく対応でき、ノーマルでは燃料が足りなくなるインジェクターの選択の幅も広がります。

○NB2以降のBP-VEエンジン
 可変バルタイが付いたBP-VEエンジン。吸気側のカムシャフトのバルブタイミングを油圧で変えて、特に中間域のトルクを増やすような形で制御しています。ノーマルECUの細かな制御の数値は分かりませんが、FreedomでBP-VEエンジンを回して、中間域でぐいっとバルブタイミングを変化させると、実にトルクフルで高回転まで吹けきる気持ちの良いエンジンとなります。

 

 空燃比計なども含めて20万コースの投資となるフルコン化。純正ECUでカバーできれば、ROMチューンなど純正の良さを生かす方向で、以上のような仕様を求める場合には導入を検討してください。

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